ライナーノーツ by プロデューサー石田ショーキチ
まちだガールズ・クワイアのカバーアルバムも3枚目となった本作品、今まで以上に洋楽に比重が寄って本気度を高めて制作した一枚。制作サイドの視点を中心に解説。
1, 一万マイルの彼方へ(Scudelia electro)
2003年にリリースしたScudelia electroの作品。Sal soulレーベルのDouble Exposureのようなソウルディスコがやりたくて作った曲で、コーラスアレンジもほぼ2003年当時のものを踏襲している。当時は全部自分で多重録音でハモったのであまり面白くなかったが、やはり6人で一斉にハモるとこの重厚さはアレンジャー冥利に尽きる。元々男性ボーカル(私ですが)の曲なのであまりレンジを高くしてしまうと雰囲気が変わりすぎるのである程度のレンジの低さをキープしたく、低音に強いひよりをサビのメインボーカルにアサイン、実にソウルフルな作品となった。
DAWの話になるが、Reasonを10年ぶりくらいに最新バージョンにアップグレードし、あまりの進化に気絶しそうになった。ギターを弾いた以外は殆どReasonの音源で演奏しており、特にストリングスの音の進化は凄まじいものがある。
2, Wouldn’t it be nice(The Beach Boys)
この曲は末っ子のほのかがやりたいと言い出して採用した曲。6声あるとビーチボーイズのようなオープンハーモニーもアンサンブルが作りやすい。
3, Carnival(The Cardigans)
90年代を象徴するようなカバー曲をやりたいと思い選曲。6人を2チームに分けてそれぞれ三部コーラスにして1コーラス目と2コーラス目にわけて歌う。音源としてだけでなく録音そのものもReasonで行った。ミックスまでやってみて、通常のDAWとメーター感が全然違うのでかなり戸惑う。基本的にレベルをデカ目に扱う(というかレベルの管理が杜撰)ところがあまりエンジニア的でなく(昔からの)DJツール的な性格が良くも悪くもファットな音になりがちで、悪く言うと素人でもフロア向きのデカい音が作りやすく設計されてるツール。この曲のなんとなく音のパツっとつまった太い感じ、まさにReasonサウンド。
4,千夜一夜物語(FOUR TRIPS)
成瀬英樹率いるFOUR TRIPSのカバー。25年ぶりに同バンドが新曲を作った時に彼らが作ってくれたオケでカバーさせてもらったが、本作品ではズルせずに一からアレンジを書いた。例によってドラムとベースの音源はReason、オルガンとエレピはFOUR TRIPSのaiさんのテイクをそのまま使わせてもらい、ギターとピアノは私が弾いた。今回のカバーにあわせて実に厚かましいお願いを成瀬君に頼み、何箇所か歌詞を修正してもらい今の女子の言葉としてフィットする形にアジャストして頂いた。本当にありがとうございました。カバー曲のはずが別バージョンとして曲を頂いてしまったような感じ。感謝しております。
5, Atmosphere(LiLii Kaona)
2022年惜しまれながら解散した町ガのマブダチLiLii Kaonaの名曲。原曲はストリングスによるフレーズが印象的だが、それをシンセサイザーで表現した意欲作。シンセ音源はmoogのシミュレーターで非常に太い(というかデカい)音が特徴、それ故シンセサウンドながら爆音風になった。
6, プラネタリウムのある町で with 矢舟テツロートリオ(self cover)
7,恋するポルカドットポルカ with 矢舟テツロートリオ(self cover)
最近あちこちで引っ張りだこのジャズピアニスト・矢舟テツローさんのトリオとレコーディングしたセルフカバー作品。矢舟さんのペンによる「プラネタリウムのある町で」と矢舟テツロートリオがとあるライブで演奏した「恋するポルカドットポルカ」のジャズアレンジが最高だったので町ガのカバーアルバムでやってくださいとお願いした曲。アレンジいいねー。
レコーディングは鶴川駅近くのポプリホールのリハーサル室で。広いこの部屋でグランドピアノ・ドラム・アップライトベースに歌、全部一緒にせーので演奏して録音。そんなことしたら全部のマイクに色んな楽器の音が被っちゃって無理じゃん、て言うのは昔の話で、いまじゃ一つのマイクに被った楽器を分離するなんて朝飯前の世の中になりましてほんといい時代になりました。
8, 猫に願いを(ライブ)(Scudelia electro)
98年?だったか、Scudelia electroで作った曲。年下の二人にメインボーカルをアサインした意欲作。やはりオッサンが歌うより女子が歌ったほうがフィットする曲である。
9,Hail holy queen(Traditional)
ウッビーゴールドバーグ主演の映画「天使にラブソングを」から。リーダーえりかの希望で採用。ピアノはScudelia electroの吉澤瑛二巨匠。誰一人サボれない難しい本気曲で、これもピアノと同時に一発録音。年末クリスマス時期になるとキャロルと共に定番になってきました。
10, Bohemian Rhapsody(Queen)
言わずと知れたクイーンの名曲。これを初演した2019年の町田市民ホールでは危うさ満点だったがいつの間にかこれがハイライト曲として武器になっていたりするあたり、成長が見てとれる。元々7声で書いたアンサンブルだったが6声に直して歌う現在。
演奏は佐々木良君がベースを弾いた以外は私が弾いている。ただしピアノは弾いたmidiデーターを編集しながら形にしたので上手く聞こえているがそれは錯覚です。ギターは気合いれて本気で弾きました。