先日のトッドラングレンのインタビューは衝撃的であった。今や40分も時間をかけてアルバムを聴く人間なんていない、ロックはサブジャンルに成り果てた、など。
https://amass.jp/185488/
それでもドッドはロックを信じているし、フルアルバムは作り続ける、という決意は嬉しかったが、問題は、僕たちがロックを信じられるかどうかとこちらに委ねられているってことだ。
HARISSというバンドを見ていると、無条件にまだまだロックは信じられるなと思わせてくれるから不思議なんだよね。このバンドにあるのは所謂ロックらしい危険な香りとかではなく、友情や融和といった人間同士の親和性と音楽を好きで好きで仕方ない愛情みたいな感じだったり、人としてなんだか愛おしく感じる部分ばかりで、実にチャーミングな魅力を持っているバンドであるのだよね。
僕がこのHARISSのニューアルバムを録らせてもらうことになる経緯として、まずAKIRA君とThree Taller Hatsという三人組のコーラスグループを組んだことがきっかけだと思う。僕とAKIRA君を繋いだのは双方の友人であったCHARLIE AND THE HOT WHEELSの岡田純で、昔のロックンロール、オールディーズが好きな三人でコーラスグループやろう、となった。まあこのマニア中のマニアな二人に比べたら僕の昔の音楽に対する知識なんて百科事典に対する小学生の日記帳みたいなもんで話にならないのだが、声のアンサンブルを書くことを日常的に行なっている僕のワークはちょっとAKIRA君の目に新鮮に映ったようで、興味をもってもらえたところからのプロデュースの依頼を頂くに至ったんだと思う。
実際にHARISSとスタジオに入って感じたのは、AKIRAというポップセンス抜群のソングライターと友情と信頼で繋がるメンバーたち(しかも一人は実弟)という、音楽好きな友達集団がたまたま全員演奏のスキルがとんでもなかったみたいな言い方がピッタリくるんじゃないだろうか。
ここに至るまでの歴史の中で活動が止まることもあったり、音楽性を巡っての細かい衝突もあったそうだ(僕から見たら大きく見ればずっと変わらずパワーポップじゃんて笑ったりした)けど、音楽に実直に向き合う姿勢がぶれずに仲間と繋がりあって進んできた20年であることは間違いないでしょう。
前作から数えて17年もの歳月が経ったという今アルバム、当然それなりの年齢になったメンバーからは円熟という言葉とは全く無縁の、まだまだ全然無邪気な音が跳ね躍る瑞々しい作品となった。こういう希望に満ち溢れた作品を聴く限り、僕たちはまだまだロックを信じることが出来るし、信じさせてくれるのがHARISSだ。
さあ、カーステレオでボリュームを上げて窓を開けて走ろう。KILL ME R’n’Rなんて言いながら生きる希望に満ち溢れたこのアルバムは、自然と君の右足を深く踏ませてしまうだろうからどうかお気をつけて安全運転でね。Baby, I’m very happy with you!
AKIRA君の全曲解説に to be continue.
プロデューサー石田ショーキチ
全曲解説 texit by AKIRA
今年、結成20年を迎えて完成したNEW ALBUM『KILL ME ROCK’N’ROLL』。
このほとんどの楽曲は2016年の活動休止前に既に出来上がっていた未発表曲だった。
HARISSは個性的な4人で2005年に結成された。それぞれがファーストキャリアのバンドでそれぞれのジャンルで名を馳せていたのでその4人で作られる世界観はどんなモノになるのかと周りをざわつかせた。その想像通り、HARISSは独自の音楽を発信し続けてきた。
しかし、その楽曲がアウトプットに至るまでにそれぞれのこだわりで完成に至らなかったり、タイミングを逃してしまっていたりした曲が沢山あった。今回その交通整理をしてくれたのがプロデューサーの石田ショーキチさんであり、ある意味デコボコだったHARISSを4人横並びにしてくれたアルバム、それが『KILL ME ROCK’N’ROLL』だ。
フルアルバムとしては17年振り、作品としては9年振りのアルバムなのでまずはHARISSの得意ナンバーからスタートしたかった。そんな想いから1曲目を飾る『BABY HAPPY WITH YOU』はHARISSの18番、ポジティブロックンロールナンバーに仕上がった。HARISSのライブはキラキラしているとか、ライブを見ると多幸感に満ちると言われる事がある。それをまさに体現しているこの曲で始めたかった。
そして続く『ROLL OVER WEEKEND』はHARISS流『I FOUGHT THE LOW』。
SEIJIとTAKAHASHI KOUJIが好きなTHE CLASH感、AKIRAとYUJIが好きなSTRAY CATS感を上手く融合させたかった曲。20周年のテーマ『ROLL OVER HARISS』はまさしくこの曲の『週末という概念をぶっ壊せ!』という詞からインスパイアされたテーマ。
そして3曲目の『FUTURE LOVE SONG』。YUJIのSLAP BASSをフューチャーしたこの曲はHARISS流のTHE STROKES MEETS ROCKABILLYナンバーだと思っている。2012年にたどり着いた『BELIEVER』に並ぶ核心ソング。ある意味このALBUMの中で一番シャッフルビートでHARISSらしい曲。この冒頭3曲がHARISの名刺がわりの曲だ。
そしてここから新たなHARISSを表現した4曲目の『KILL ME ROCK’N’ROLL』。
これはミニアルバム『BELIEVE US』の『CO2』という曲でもトライしてたarctic monkeysのようなガレージロックンロールな曲調にハードボイルドのような日本語詞を乗せた今までのHARISSにはない世界線。こういった詞の世界は今までのHARISSにはなかった。
続く5曲目はSCUDELIA ELECTRO石田ショーキチ氏+HARISSという構図が
遺憾無く発揮されたDISCO + ROCK’N’ROLLナンバー『狂乱DISCOビリー』。
TAKAHASHI KOJIのグルーブと打ち込みループが見事に融合した『令和版ええじゃないか』を意識した詞が独自な世界観を構築している今作の中でも出色の異色曲だ。PRIMAL SCREAMとエンニオ・モリコーネのマカロニウエスタンをMIXしたような世界観にしたかったんだ。
6曲目の『LEMON SODA』も今までのHARISSには無かった女性目線の詞を載せた
POPSONG。アニメ『ハニーレモンソーダ』にインスパイアされた曲で、塞ぎがちだった女の子が勇気を持って外に飛び出していく様を詞をTHE SUPREMESのようなモータウンリズムにのせたGOODSONGに仕上がった。
続く7曲目からはHARISSの持つメロディアスな世界を表現するコーナー。
その始まりは『Marie don’t cry』。今までアコースティックバージョンやデモバージョンでしかリリースされなかったこの曲だったが、ライブ感を大事にした完成形をやっと録れたような気がしている。今作の中でも秀逸の出来栄えになった。
そして8曲目『DO YOU WANNA DANCE ?』。これもDEMOバージョンから蘇った
HARISSらしいオールディーズフレーバーなロックンロールに仕上がった。50〜60年代のCHUBBY CHECKERからEDDIE COCHRANへ、そして70年代のBARRY BLUEみたいなイギリスのグラムポップンロールから2000年代のHOWLERへ繋がる流れを表現した。
9曲目の「サヨナラ機関車』はHARISSならではの哀愁メロディーに
セイジの哀愁ギターサウンドが気持ちよく絡む名曲に仕上がっている。
故郷の事を綴った詞はメロディーにもマッチして郷愁を誘う楽曲に仕上がった。
ALBUM最後を締めくくるのは『TEENAGE FUN CLUB』。THE VIEWのロックンロールを彷彿させるこの曲は現在のHARISSを語る上で外せない全年代に送る熱い応援ソング。これが現在のHARISSのリアルであり、今まで共に歩いてきてくれたみんなに送るHARISS流ラブレター。HARISSはずっと君のFUNCLUBと高らかに歌い上げるこの曲はこれからのHARISSの代表曲になっていくだろう。
こうやって多彩な曲が詰まったALBUMなんだけど、全体通して聞いても10曲で35分と
いうまさにロックンロールな短さだ。
結成20年。メンバー全員50代にしてこんな情熱に満ちたアルバムが作れたのはまさに奇跡だし沢山の人たちの支えがなかったら達成できなかった事なので感謝している。
本当にどうもありがとう。
これからもHARISSは独自のロックンロール道を突き進んでいくから共に歩んでいこう。
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